こんにちは、おにぎりパンです。
2021年1月8日に富山県を舞台にした映画が公開されました。
そう「大コメ騒動」です。
金沢市民の私としては、「隣県が舞台とあっちゃ見ないわけにはいかないぜ」なんてこともなく、普通にスルーする予定だったのですが、県内であまりに新作映画が公開されないものだから、この映画を見ることにしました。
ということで本記事では映画「大コメ騒動」についての感想を書き連ねていきます。
映画「大コメ騒動」のあらすじ
1918年(大正7年)8月、富山の海岸に暮らすおかか(女房)たちは、毎日上がるコメの価格に頭を悩ませていた。夫や育ち盛りの子どもたちにコメを食べさせたくても高くて買えない現状に困ったおかかたちは、コメを安く売ってくれと米屋に嘆願に行くが失敗し、おかかたちのリーダーであるおばばが逮捕されてしまう。おかかたちの願いもむなしく、コメの価格高騰はとどまることを知らなかった。そんな中、ある事故をきっかけに、我慢の限界を迎えたおかかたちがついに行動に出る。
富山県出身で「超高速!参勤交代」を手がけた本木克英監督が井上真央を主演に迎え、大正時代に富山県の海岸部で発生した「米騒動」で活躍した女性たちの姿を痛快に描いた。主人公・松浦いと役を井上、姑役を夏木マリ、夫・利夫役を三浦貴大がそれぞれ演じるほか、室井滋、立川志の輔、西村まさ彦、柴田理恵、左時枝ら富山県出身俳優たちが顔をそろえる。
富山県のオールスターで作られた、富山県の米騒動を描いた作品。見て思った一番の感想は、「ここまでコテコテの富山弁は他県の人にどれだけ受け入れられるのだろう」でした。劇中ほぼすべての人が富山弁で話し、富山弁で罵り合う。ここまでコテコテの富山弁は津軽弁や沖縄弁ほどではないにしろ難解に感じるのではないでしょうか?見た人の感想が聞きたいですね。
映画「大コメ騒動」の感想
基本的にいい作品
基本的にいい作品であるのは間違いないです。
でも、コメディ映画としては、かなり中途半端な出来なように感じました。なんというか、よくできてるし、ツッコミどころも少ないのに、なんか印象に残らない感じの作品でしたね。多分これと言って感動することが無かったからですかね?やっぱり心を動かされてこそ印象に残るというものでしょう。正直、積極的に他人に勧める映画ではないですかね。
とはいえ、いいところはたくさんある映画でしたよ!
以下に良かったところと気になったところを書いていきます。
強烈な富山弁
まず、この映画を見た人なら誰しもが感じるのは方言が滅茶苦茶キツイということだと思います。
特に室井滋演じるおばばの富山弁はコテコテです。富山弁を知らない人は、「いくら何でもやりすぎなのでは?」と感じるのではないかと思います。
ですが、金沢在住で母が富山県出身。母方祖母は富山の漁港生まれで旧姓は「釣(つり)」、そして富山県内に嫁いだコテコテの富山人。という本作に出てきてもおかしくない人を実際に知っている身から言わせてもらうと、富山県の老人は本当にあんな感じです(笑)。室井滋のおばばのしゃべり方が、数年前に他界した母方祖母と一緒で衝撃を受けました。うちのばあさんをモデルにしてるんじゃないかというくらい、室井滋の演技の解像度が高く、マジでビビりました。重ねて言いますが、富山の老人は本当にあんな感じで喋ります。大袈裟でも何でもないです。まじです。
逆にあそこまでコテコテの富山弁だと、富山弁に馴染みのない人からすると、リスニングのテストみたいな状況になってるんじゃないかと心配になるほどでした。富山弁を知らない方の感想を聞いてみたいですね。
当時の社会的な背景を抑えたわかりやすい話
コテコテの富山弁とは裏腹に、映画の作り自体は当時の社会的な背景をしっかりと押さえており、理解しやすいように丁寧に作られていた印象です。
特に冒頭で、当時お米がいかに重要な食糧であったかを明確に示しているのは非常に物語をわかりやすくしていると思います。最初のあの盛に盛った白米の映像から、劇中に出てくるひもじいご飯の映像のギャップは、劇中の人物たちがいかに追い込まれているのかをより鮮明に、明確に表してくれていました。
また、当時の絶対的な男尊女卑の社会構造も非常によく表現されていたと思います。家庭内では非常に強い浜の女も、社会的には一人のただの女であり、家庭で如何に強かろうと社会的には弱者なのです。このことは作中のある男性が発した「男が騒ぎに参加したら、騒動が大きくなる。女だけなら騒ぐだけで社会はなんも変えられん」というセリフがよく物語っていると思います。
話は変わりますが、富山の女は本当に強いですよ。私の母も気が強いですし、母方祖母も非常に気の強い人でした。いつの時代も男は女の尻に敷かれるのが家庭円満の秘訣なのかもしれませんね。
また、物語終盤で夏木マリが孫の男の子を諭すシーンの「身勝手な正義を押し付けるのはいつも男。そのしわ寄せで割を食うのはいつも女」というセリフも、今では古いとされる「男は外で稼ぐのが仕事。家庭を守るのが女の仕事」という価値観の中で生きてきた女性の心の叫びとして非常に印象に残っているセリフです。あのシーンは夏木マリの演技力なくしては成り立たなかった名シーンだと思います。
演技が非常にいい!!
本作の女優さんたちの演技はすばらしかったです。
特によかったのが、主役の井上真央、姑役の夏木マリ、町のかかあを取りまとめるおばば役の室井滋、ちょい役ではあったが圧倒的な存在感を残した柴田理恵です。
まず、井上真央さんはメイクが映えててよかったですね。漁村で肉体労働に従事する人らしく黒い肌に小汚い恰好で、なのに白い目が大きくて非常に画面映えしていました。また、演技も安定感があり終始良かったです。
夏木マリさんは、出番こそ多くはなかったですが、醸し出す圧が本当にすごかったです。言葉にせずともここまで心情を表現できる女優と言うのは本当に貴重な存在だと心底思いました。また、終盤の孫の男の子を諭すシーンではその強烈な迫力と孫に対する慈愛を両立させた、夏木マリにしかできない演技だったと思います。
そして、室井滋さん。本作で一番おいしい役どころだったのではないでしょうか。この記事の中でも何度も触れていますが、彼女の演技は決して過剰ではないです。富山県の気の強い老人はマジであんな喋り方ですから。解像度の高さに本当に驚きました。ビジュアルはちょっとわからないですが、演技に関しては完璧と言っていいでしょう。少なくとも私の祖母はあんな喋り方でした。
最後に柴田理恵さん。彼女は富山県を代表する役者であることから、ちょい役であっても圧倒的な存在感があったと思います。映画を見終わって細かいところを忘れても、「あぁ、柴田理恵出てたな」ってことは全員が覚えているのではないでしょうか。
気になった点
気になった点はいくつかあるのですが、特に大きな点は大阪の記者周りの話です。非常に薄っぺらく感じました。「監督か脚本がマスメディアを批判したくて入れただけなのかな?」と思うくらい薄っぺらい。あの程度の役割なら記者周りの話をカットして、富山弁での罵り合いの場面を追加してくれた方が良かったのではないかと思います。また、富山弁に非常に力を入れていた一方で、大阪からの記者はほぼ標準語だったのが強烈な違和感となってました。そこももうちょっと頑張って欲しい。
まとめ
映画「大コメ騒動」を観た感想を書いてきました。
本映画の良かった点・気になった点をまとめると以下のような感じです。
生きた富山弁を見れる数少ない映画
当時の時代背景が非常にわかりやすく描かれている
多くの演技派女優が出ており、いずれの演技も素晴らしい
新聞記者周りの話が薄っぺらい
何度も書きますが、富山弁を知らない人に見てもらって感想を聞きたい作品でした。また、映画を見た方に改めて伝えますが、室井滋演じるおばばの演技は過剰じゃないです。マジで富山のばあさんはあんな感じですから。