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【ニセ科学】理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた②

こんにちは、おにぎりパンです。

前回の記事でお昼の情報バラエティ番組「ヒルナンデス!」で紹介された「電子水」なる怪しげな水を使った化粧水「エレクトロンスキンローション」について調べました。

その結果、紹介文が「おそらく化学を学んできたことのないような人が書いたのかな?」というようなツッコみどころにあふれた内容でした。

しかしながら、前回のサイトだけでは『「電子水」とは何か?』という疑問がいまいち晴れず、もやもやしたままでした。

JCASTニュースの記事を見る限り、前回調べた化粧水に使われている電子水はアルカリイオン水である可能性が濃厚です。

 

なので、今回は電子水の作り方を調べてみました。

その結果、まぁ適当なことが書いてある書いてある。

言わずもがな、ツッコミどころ満載だったので記事にしようというわけです。

今回参考にさせていただいたサイトは、「電子水」で検索して一番上に出てきた「エレクトロンマエダ」というサイトです。

これから先は、「電子水とは|電子水、炭素埋設(炭埋)のエレクトロンマエダ」の記述にツッコんでいきます。

上記サイトを読まなくても、ある程度分かるように書くつもりですが、読んでおいたほうが理解しやすいと思います。

 

ツッコミ1:電子水の説明

今回参考にしたサイトの電子水の説明は以下のように記されています。

◆電子水(e-water)って何?

電子水(e-water)とは、水道水や地下水などの飲料できる水に、マイナスの電子(マイナスイオン)を供給した水のことです。地球上の自然物は電子の集合体といわれ、電子は健康のバロメーターになっています。特にマイナスの電子が人工的化学物質等により放電し、少なくなっていくと、病気をしやすくなるといわれています。環境汚染が進み、カルキを入れざるを得なくなった水道水はマイナスの電子がかなり放電してしまっています。そこで、マイナスの電子を供給することにより、本来の効力を持った水に戻してあげるのです。

電子水とは|電子水、炭素埋設(炭埋)のエレクトロンマエダ より

 

マイナスの電子(マイナスイオン)を供給した水

出ました!

「マイナスイオン」!!

このワードが出てくると途端に胡散臭く感じてしまうのは私だけでしょうか?

そもそも「マイナスイオン」という言葉は学術用語ではないので、科学の分野ではあまり使われない言葉なんですよね。

まぁ、このサイトは科学者向けのサイトではないので、そこは置いておきましょう。

どちらにしても、電子とマイナスイオンと呼ばれるものは別物です

これを混同した記述がある時点で、このサイトを作った人の科学の知識の無さが窺えます。

前回の記事でも書きましたが、電子とは原子を構成する一要素です。

電子そのものは単体では非常に不安定なので単体で存在することはほぼありません。

つまり、電子を供給するということは何かしらの電子供給体としての化学物質(還元剤と呼ばれます)を入れるか、アルカリイオン水のような電気的な手法で陰イオン濃度を上げる必要があるのです。

ちなみに、マイナスイオン商法も流行りましたけど、学術的な根拠はほとんどありませんからね(全くとは言っていない)。

 

電子は健康のバロメーターになっています

ちょっとよくわからないですね。

私の知る限りでは、電子を健康のバロメーターとしている研究論文はありません。

その根拠を知りたいですね。

ここはこの後の理論展開の前提に当たる部分なので、前提がおかしい時点で論理が崩壊しています。

 

電子が人工的化学物質等により放電し、少なくなっていくと、病気をしやすくなるといわれています

電子が人工的化学物質により奪われ、人工的化学物質が排出されることにより体内の電子の量が少なくなっているということなのでしょうか?

ここも科学的根拠がありませんね。

やはり、体の電子が少なくなっていることを示すデータとそれにより病気をしやすくなる根拠を示してほしいところです。

 

ツッコミ2:アルカリイオン水との違い

参考サイトの「アルカリイオン水とどう違うの?」の項目ではアルカリイオン水と電子水の違いを説明しています。

以下引用

“アルカリイオン水”とは、医療用物質生成器の貯槽式、または連続式電解(電気分解)水生成器といわれる、厚生労働省承認の医療用具でつくられた水で、水の中にプラス極とマイナス極の電極を入れ電気分解し、プラス極に集まったアルカリ性の水のことです。電子水(e-water)は、静電誘導という現象を応用して水や食品を構成している分子を振動させ、水のクラスター(分子集団)を小さくし、まろやかな甘味のある水にします。水の中に失われたマイナスの電子を供給することによりできた、電子量の多い水です。

 

アルカリイオン水の作り方

これはツッコミというより純粋な間違いの指摘なのですが、参考サイトにはアルカリイオン水について「プラス極に集まったアルカリ性の水のことです」と記述されていますが、これは誤りです。

アルカリイオン水は電気分解装置の “陰極” 側でできる水のことです。

水は電気を流すことにより電気分解して陽極で酸素、陰極で水素が発生します。

2H2O → 2H2 + O2

陽極:4OH → O2 + 2H2O + 4e

陰極:2H+ + 2e → H2

この時の陰極の反応を見てわかる通り、「H+」を消費して水素を生成しています。

つまり、陰極側の水では「H+」濃度が減少するのです。(水がアルカリ性になる)

この電気分解装置の陰極側の水を汲み取ったのがアルカリイオン水です。

ちなみに、陽極側の水は酸性になります。

 

水のクラスターを小さくした

現在の水に関する研究では水分子がバルク内(水の中の空気と触れ合っていない部分のこと)においてクラスター(集合体)構造を取るのかは議論の中にあり、はっきりとしたことは言えないという状態です。

そして、もし水がクラスター構造を形成しているとしても、クラスターの大きさを評価する術が確立されていないので、「水のクラスターが小さくなる」という表現に裏付けはありません。

参考サイトの表の中に「NMR半値幅の減少」というものが記されています。

水販売業界でNMRが出てきたら十中八九クラスター評価の指標として使われています。

しかし、水の17O-NMRのT2緩和時間(半値幅の減少)が、pH7付近でpHに大きく依存するために、クラスターの大きさを評価として適さないことはすでに明らかになっているほか、山形大学の天羽優子準教授が「液体の水のクラスターに関する誤解について」の中でまとめているように、そもそもNMRの半値幅減少はクラスターサイズを測っているわけではありません。

したがってクラスターが小さくなっている根拠がありませんし、そもそもクラスターの存在自体がまだわからないものです。

そういったものを、こうも堂々と記述するのはいかがなものかと思います。

クラスターとは科学的には分子の凝集体のことを意味します。

英語でブドウの房を意味することからこのように呼ばれています。

水を研究している学者の間で、常に議論されていることの一つとして、水分子(H2O)は液体の時どのような状態でいるのかというものがあります。

水は液体の時に分子が集合した塊(クラスター)でいるのか?

それとも水という流体の中では分子は自由に動ける以上、塊(クラスター)を作っていないのか?

という議論です。

このクラスターというものは誰も見たことがありません。(分子が見える目を持つ人はいませんからね)

ではなぜこのような議論が行われるのかという理由が以下の2つです。

・理論上クラスターを形成しても不自然ではない程度に水分子間に相互作用がある
・水がクラスターを形成すると仮定した場合にいくつかの水の特性が説明できる(ex : 水は4℃で密度を最小にする)

 

ツッコミ3:電子水の作り方

参考サイトでは「電子水(e-water)のしくみ!」という項目に以下のように記されています。

水道水を絶縁されたタンクやボトルに入れ、交流の高電圧を与えます。交流の高電圧とは+プラスと-マイナスを交互に与えるということです。エレクトロンチャージャー研究所の製品では、1秒間に50回から60回+プラスと-マイナスを繰り返し水道水に与えます。するとそのたびに水分子自体が振動、回転させられます。

電子レンジは、1秒間に24億5000万回、この作業を繰り返し水分子を激しく回転させ,その運動エネルギーの摩擦によって熱を起こします。その結果、水分の温度が上昇し食品を温めるのです!

水分子くんです!e-waterの水分子くんは目には見えませんが動いてます!

電子水は交流の電圧でプラスマイナスを定期的に入れ替えることにより作られるそうです。

そして、この仕組みは参考サイトにも書いてある通り電子レンジの仕組みと同じなんです。

じゃあ電子レンジで水をチンすればよくね?

別に装置を買わなくても電子レンジがあれば噂の電子水は作れそうですよ。

 

ツッコミ4:電子水の効果

参考サイトでは「電子水(e-water)の効果!「美容と健康、美味しい水」」という項目になります。

以下引用

◆「水はまろやかで甘きを良しとす

電子水(e-water)はとてもまろやかで甘味があります。水を飲みなれていない方やお子様でも抵抗なく飲め、他の浄水器・整水器にはつくることができない水です。

貝原益軒 養生訓より

弱アルカリ性のpHは身体にやさしい

人体の体液は弱アルカリ性であることが健康体と言われています。電子水(e-water)はpH7.3~pH7.4の弱アルカリ性で体液と同じです。だから身体に負担をかけません

◆生け花が長持ちするのよ!

ご利用いただいているお客様の声で、常に出るのがこの言葉です。

◆ゴクゴク!たくさん飲める水

たとえ、ミネラルが多くてもまずい水は飲めません。電子水(e-water)はたくさん飲んでもお腹にたまらないとよく言われます。美容と健康には、まず水をたくさん飲むことです。パリコレのモデルさんは最低1日2リットル!

◆酸化抑制効果がある

食品業界では食品の製造ラインにおいて電子水(e-water)を使用することで、酸化抑制効果があるとされています。これは人間にも有効?酸化しない?年とらない?

細胞機能を活性化させる

「細胞からの毒物の排除と細胞機能の活性化にはe-waterが有効であった」

北海道大学水産学部 鈴木教授論文より

◆残留塩素が少ない

質の良い備長炭がe-waterには必要のない、有害な塩素を吸着してくれています。

 

水はまろやかで甘きを良しとす

「水のクラスターが小さくなると水の口当たりがよくなって甘くなる」というのは、この怪しげな水販売業界でよく目にする文言ですが、これは科学的に立証できてないですからね。

上でも説明したように、水がクラスターを作るかという話は専門家の間でも決着がついていないことなのです。

ですから、クラスターの大きさと味の関係なんて現状ではわからないはずなのに堂々と書いているのはよろしくないです。

この「水のクラスターが小さくなると水の口当たりがよくなって甘くなる」がどこから出てきたのかという話は、山形大学の天羽優子准教授が出している「液体の水のクラスターに関する誤解について」に書いてあるので興味があれば読んでみよう!

 

弱アルカリ性のpHは身体にやさしい

参考サイトでは、「人体の体液が弱アルカリ性だから同じ弱アルカリ性の水は体に負担が少ない」と書いてあります。

人体の体液が弱アルカリ性というのは、「健康な人の動脈血のpHが大体7.4前後」というところからきているのでしょう。

そこは正しいです。

でもよく考えてください。

飲んだ水はまずどこに行くのかを

そのまま血液になるなら弱アルカリ性のほうが確かに負担は少ないかもしれない。

でも現実は違います。

水が最初に行くのは胃ですよ。

胃は酸性なんですよ。

胃酸って塩酸ですからね。

pHにすると1~1.5ですよ。

最初にそこを通るのに、動脈血の弱アルカリ性と結び付けて負担が少ないと言うのは論理が飛躍しすぎていると言わざるを得ませんね。

 

細胞機能を活性化させる

参考サイトでは北海道大学の鈴木教授なる人物の論文を引用して「細胞からの毒物の排除と細胞機能の活性化にはe-waterが有効であった」と記述しています。

論文よりって言っているのに論文リンクも無ければ、タイトルや掲載雑誌や掲載年の記述もありませんし、著者の鈴木教授のフルネームすら書いてない始末。

リファレンスとしてあまりにお粗末ではないでしょうか。

私なりに調べてみましたが、北海道大学水産学部で教授になった鈴木さんは鈴木翼(すずき あきら)さんしか見つけることができませんでした。

しかしながら、鈴木翼先生の論文で電子水に関するものを見つけることができませんでした。

本当にそんな論文あるんですか?

 

まとめ

前回の記事に引き続き電子水について調べてみました。

本当はもう一つ紹介したいサイトがあったんですけど、そちらのサイトは文章量が滅茶苦茶多くて、ツッコミも相応の多さになってしまったので、そちらは次回やりますね。

今回は前回よりも学術的な内容も多くなってしまい、難しいかもしれませんが、化学を学んできたものとしては、やはりアカデミックな部分が気になってくるんです。

おそらくこの記事までたどり着いた方はそこそこインターネットが使えて、自分でいろいろ調べる力を持っている方々なので大丈夫だと思いますが、こういった怪しい商売には気を付けましょうね。

正しい知識を持っていれば調べるまでもなくこういった商売の穴が見えてきます。

知識は力ですから。

皆さん、新しい知識のインプットは積極的に行いましょうね。

ではでは~ノシ

 

ABOUT ME
おにぎりパン
名前:おにぎりパン 年齢:アラサー 生息地:石川県産,広島在住 職業:大学院生 趣味:旅行,映画,ラジオ