こんにちは、おにぎりパンです。
「またこれかよ」と思った方、そうです。またこれです。
前回、前々回と、お昼の情報バラエティ番組「ヒルナンデス!」で紹介された「電子水」について調べ、理系院生として科学の観点から「それはどうなの?」というところにツッコミをいれてきました。
本当は今回の記事は前回の記事とまとめて紹介しようとした内容なんですけど、文字通り「ツッコミが追いつかない」状態になりそうだったので記事を分けました。
ですから、趣向としては前回と同様な感じになります。
今回、参考としたサイトは電子水生成器を生産している「アレージャパン」の商品を取り扱った通販サイト?なんですかね?
サイトの内容は電子水生成器を生産しているアレージャパンの「電子水とは」の内容とほぼ同じ出したが、ハチャメチャ度が上がっていたため、「VOICE」の方を参考サイトとさせていただきました。
上記サイトを読まなくても、ある程度分かるように書くつもりですが、読んでおいたほうが理解しやすいと思います。
~目次~
- ツッコミ1:酸化還元が何かを理解できていない
- ツッコミ2:水のクラスターの存在は議論の中にある
- ツッコミ3:波動数値ってなんだよ!!
- ツッコミ4:「電子」と「電波」は別物ですから!!
- ツッコミ5:アルカリイオン水はそんなに簡単に水には戻らない
- ツッコミ6:だから電子レンジでいいじゃん!!
- ツッコミ7:ミネラルは増えないから!!
- ツッコミ8:pH7.4が最適はおかしいからな!!
- ツッコミ9:結局ただのアルカリイオン水なんですか?
- ツッコミ10:一概に電子が逃げやすいわけじゃねーから!!
- ツッコミ11:プラスイオンの効果に科学的裏付けはねーから!!
- ツッコミ12:活性酸素は「陽イオン酸素」じゃねーから!!
- ツッコミ13:殺菌作用はあくまで電波の力ですから!!
- ツッコミ14:盛りすぎやろ!!
- まとめ
ツッコミ1:酸化還元が何かを理解できていない
参考サイトの頭の方に以下のような記述があります。
★起源は70年前!酸化還元の高いエネルギー豊富な電子水!
「酸化還元の高いエネルギー豊富な電子水」
まず日本語がおかしいのですが、そこは置いておいて。。。
この一文で、「酸化とは何か?」「還元とは何か?」ということが理解できていないことが分かります。
このほかにも「酸化還元を理解していないんだろうなぁ」という記述が多数ありましたが、割愛させていただきます。
酸化と還元は表裏一体です。
化学反応において、ある化合物が酸化した(酸素を受け取った or 電子を失った or 水素を失った)場合、必ず還元される(酸素を失った or 電子を受け取った or 水素を受け取った)化合物が生まれます。
つまり、「酸化されやすい(酸素を受け取りやすい or 電子を失いやすい or 水素を失いやすい)」という特性を持つ化合物は、同時に「還元されにくい(酸素を失いにくい or 電子を受け取りやすい or 水素を受け取りやすい)」という特性を持ちます。
逆もまたしかりです。
つまり、電子水の場合は基準となる水道水のような一般的な水に対して、電子水は「酸化しやすい」のか「還元しやすいのか」どちらかの状態しかありえないのです。
ツッコミ2:水のクラスターの存在は議論の中にある
前回の記事でも書きましたね。
参考サイトには以下のような記述があります。
水の分子構造が細かくなり、浸透率が高くなると水が美味しく健康的な心身を創ることが分かり開発しました。
まず、水の分子構造とクラスター構造は別物です。
そして、前回の記事でも書いたように、水がバルク中(水中)でクラスター構造を形成するかは専門家の間でも意見が割れており、クラスターの存在が確定したわけではありません。
そして、「クラスターが細かくなると水がおいしくなる」というのも科学的根拠のないデマです。
この辺の話は山形大学の天羽優子准教授が「液体の水のクラスターに関する誤解について」の中でまとめています。
ツッコミ3:波動数値ってなんだよ!!
参考サイト中に以下のような記述があります。
波動数値も高く(100マックスで平均60ポイント以上)、酸化還元能力は水であって水とは到底ないような高純度のエネルギーを創り出します。
軽く調べてみましたが、オカルト製品しか出てきませんでした。
波動数値がなにで、数値がどういう値をとるのがいい状態なのか全く説明がないので何も理解できません。
ちなみに、私が見たサイトには波動数値は50が一番いい数値で体調や生活習慣が崩れると50から離れていくと書いてありました。
じゃあ、60以上ってダメなんじゃ・・・?
ツッコミ4:「電子」と「電波」は別物ですから!!
参考サイトには以下のような記述があります。
「電子」については細かく書きませんが、電波(周波数)と思ってください。
ダウトーーー!!!!
電子と電波って全くの別物ですから!!
電子は原子を構成する要素の1つでほぼ新球の粒と考えられています。
一方で電波って波ですから!!
電波って別に電子が飛んでるわけじゃないですからね!!
同様に以下のような記述もあります。
電波を通すことで、水に電子が豊富に含まれ、飲用することで、錆びた(酸化した) 細胞の原子に電子を補給して安定した正常な原子に修復し、健康あふれた正常な細胞に戻します。
電波を照射したからって電子が増えるわけではないですからね。
なら電子レンジにかけたらなんでも電子まみれになっちゃうでしょうが!!
ツッコミ5:アルカリイオン水はそんなに簡単に水には戻らない
参考サイトにはアルカリイオン水について以下のように書かれています。
電気で強制的にアルカリ水と酸性水に分離するため短時間で元の水に戻りやすく、また、アルカリ水は飲用されるが、酸性水はその殆んどが捨てられて、資源の無駄使いとなっています。
アルカリイオン水の安定性について私は詳しいことはわかりませんが、本当にそうでしょうか?
アルカリイオン水って名前がついてますけど、水の組成だけ見ればその実態が結局は薄い水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの混合液であるということが分かります。
作り方の違いだけですよ。
水に固体の水酸化ナトリウムと水酸化カルシウムを溶かしたか、カルシウムイオンやナトリウムイオンの入った導電性の水を電気分解して「OH–」の濃度を上昇させたかの違いだけです。
最終的にできているものは同じです。
じゃあ、水酸化ナトリウム水溶液がほっとくと水に戻るのか?
答えは否です。
「OH–」が多く入っているアルカリイオン水を普通の水に戻すには「H+」の濃度を上げる必要があります。
じゃあアルカリイオン水が普通の水に戻るとして「H+」はどこから補給されるんですかね?
空気(大気)の組成は約80%が窒素(N2)で約20%が酸素(O2)です。
水素(H2)って空気中にほとんど含まれてないんですよ。
溶け込むことで弱酸性になる二酸化炭素(CO2)は?
0.040%だそうです。
ほぼないんですよ。
水を置いといても炭酸水にならないでしょ?
そういうことですよ。
化学の視点から見るとアルカリイオン水がすぐに水に戻るとは到底思えません。
酸性水は次亜塩素酸水となるため消毒液として使われることもあるらしいです。
次亜塩素酸自体が決して安定性の高い化合物ではないので、使用期限が早いものと考えられます。
ですから、どれほど使われていて、どれほど捨てられているかはわからないですが、おそらく捨てられているもののほうが多いのでしょうね。
ツッコミ6:だから電子レンジでいいじゃん!!
参考サイトには電子水の作り方について以下のように記述されています。
水に電波を通すことにより、水は電波に共鳴して、水の分子集団が励起振動現象にりバラバラになってクラスターが細い水になり、舌の味覚細胞に合うため味がマイルドになり、のど越しが良くて飲みやすい電子水になります。
クラスターの話は置いておくとして、電波を通すことにより水を共鳴させるって、それ電子レンジの仕組みと同じですから!!
17万円もする機械買わなくても家にある電子レンジで水をチンすれば同じものが作れちゃいますね。
ツッコミ7:ミネラルは増えないから!!
参考サイトには以下のように記述されています。
カルシウム等のミネラル含有量が上がります。
水道水等に大量に含まれている藻の胞子及びクロレラ菌等はカルシウムなどミネラルの固まりです。電波を通すことによって細胞膜が破砕され保護されていたミネラル等の養分が水中に放出され、これが水に溶解してカルシウムなどのミネラルの含有量が上がります。
もともと水道水に含まれているものなら、飲んで胃に入ってしまえば細胞壁くらい溶かしてミネラルを摂取することができると思います。
ですから、ミネラルの含有量が上がるという表現は誤解を大いに招く表現だと思います。
ツッコミ8:pH7.4が最適はおかしいからな!!
こちらも前回記事で書きましたね。
参考サイトには以下のように記述されています。
水に「電子水生成器」で電波を通すとpHが7.4(アルカリ度)程度となります。人間の身体が弱アルカリ性(pH7.4)であることから、この電子水を飲用することが自然の理にかなっています。
前回記事で書いたように、このpH7.4というのは健康な人の動脈血のpHから持ってきていると思われます。
しかしながら、人が水を飲んだときに最初に到達する器官は胃です。
pH1の胃酸を分泌する消化器官です。
それを無視して動脈血のpHと結びつけるのは論理の飛躍が過ぎると言わざるを得ません。
ツッコミ9:結局ただのアルカリイオン水なんですか?
参考サイトには以下のように記述されています。
水にカルシウム等の物質を入れずに、水に含まれている化合物及びクロレラ菌等の物質を電波が変化させ、アルカリ性カルシウムイオン水を生成します。
最終的に生成されるのは「アルカリ性カルシウムイオン水」と書いてありますね。
カルシウムがどこから来たのかはクロレラ菌や藻が出していると好意的な解釈をするにしても、最終的な生産物が「アルカリ性カルシウムイオン水」って・・・
それアルカリイオン水じゃねーか!!!
ツッコミ10:一概に電子が逃げやすいわけじゃねーから!!
参考サイトには以下のように記述されています。
電子は不安定でとても逃げやすく、電子の数が減るとプラスの性質に偏り、周りの物質から電子を奪って安定しようとします。
電子が不安定なのは電子が単体でいるときや化合物がラジカル種として存在するときです。
一般的な化合物の一部として存在している場合は、逃げやすいものもいれば、逃げにくいものもいます。
その性質は化合物ごとなので一括りに電子として語ること自体がナンセンスです。
そして、もし仮に「体が電子不足に陥りやすい」と理論を展開したいのなら、どういった化合物や食べ物が電子を奪ていってしまうのかを具体的に2~3例挙げて説明すべきです。
ツッコミ11:プラスイオンの効果に科学的裏付けはねーから!!
参考サイトには以下のように記述されています。
プラスイオンが増えると「不快感を覚え、疲労・食欲減退のほか、仕事の能率や情緒面にまで悪影響」を及ぼします。
このプラスイオンの効果ですが、2000年前後に流行ったマイナスイオンを騙った商売で、「マイナスイオンが体にいい」つまり、「プラスイオンは体に悪い」という理屈で生まれたイメージであり、科学的根拠は一切ありませんから!!
実はマイナスイオンの効果については、元となった研究論文があります。
1)Perez et al., Air ions and mood outcomes: a review and meta-analysis, BMC Psychiatry 13(29), 2013.
2)Alexander et al., Air ions and respiratory function outcomes: a comprehensive review, Journal of Negative Results in BioMedicine 12(14), 2013.
これらの2本は1)マイナスイオンによる「精神・心理的効果」と2)マイナスイオンによる「身体的効果」についてのレビュー論文(複数の論文を読み比べまとめたもの)になります。
この2本で少なくとも2013年までの時点でのマイナスイオンに関するデータを総ざらいできることになります。
これらを読んでみると、マイナスイオンの効果は季節性気分障害患者という限定的な範囲でのみ、抑鬱効果が認められています。
健康的な人間に対しては効果が見られないと結論付けられているんです。
この季節性気分障害患者の抑鬱効果という超限定的な結果を、超拡大解釈して生まれたのがマイナスイオン商売なんです。
ツッコミ12:活性酸素は「陽イオン酸素」じゃねーから!!
参考サイトには以下のように記述されています。
酸素の場合、プラスの性質に偏った酸素(有害な活性酸素)が、身体の中で細胞から電子を奪うことで身体に害を与える。
そもそも酸素がプラスの性質(陽イオン化)することは本当に珍しいことで、ほとんど見られません。(ex : ジオキシゲニルイオン)
活性酸素が私たちの体に有害なのは既知の事実です。
しかし、私たちが活性酸素と呼んでいるもののほとんどは「ラジカル化した酸素(スーパーオキシド)」や「ヒドロキシルラジカル」のことであり、決して陽イオン化した酸素ではありません。
ツッコミ13:殺菌作用はあくまで電波の力ですから!!
参考サイトには以下のように記述されています。
私達が日常使用する水道水は、塩素(カルキ)によって消毒されています。その塩素がなくなるとバクテリアや腐敗菌が繁殖して、なくなった分だけ腐敗しやすくなります。そのような水に電子を与えてあげると、水が酸化しないかぎり腐敗菌が増殖できなくなる作用を生み出し、腐らない水にします。
水道水には塩素(カルキ)が入っており、それが抜けるとバクテリアや藻が繁殖するのは事実です。
しかし、電子水に塩素に代わる殺菌作用があるかと言われればおそらくないでしょう。
参考サイトの下の方にも表としてまとめられていますが、電子水が謳う殺菌作用はあくまで、電波照射によるもので電波の力です。
電波照射により本来増えるはずの菌が死滅するために、時間がたっても水がクリーンな状態を保っています。
当然新しく菌が入ってしまったら、再び電波照射しなくては殺菌できません。(電子水自体には殺菌作用はありませんからね)
ですから、水の酸化と菌の増殖をつなげるのは不適切です。
大体、水の酸化って何ですか?
水酸化物イオン(OH–)の生成のことなんですかね?
それとも酸素が生成されることなんですかね?
水の酸化って表現も謎ですね。
ツッコミ14:盛りすぎやろ!!
参考サイトには以下のように記述されています。
塩素臭、その他の臭いも消え、PHが約7.4(アルカリ度)位となり、さらに、有害電磁波をも無力とします。
理屈付けも何もなしに、いきなり臭いや有害電波の話が出てきます。
いくら何でも盛りすぎやろ(笑)
まとめ
いやぁ~滅茶苦茶なこと書いてありましたね。
これまでの2サイトと比較しても際立って酷かったです。
ひとまず、調べてツッコむという作業は今回で終わりにするつもりです。
電子水関係は一応、次回にこれまでの3記事を受けての電子水についての総括と私の所感を記事に書いて一区切りとするつもりです。
皆さんこの手の詐欺には気をつけましょうね。
ではでは~ノシ
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた①
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた②
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた【総括】