こんにちは、おにぎりパンです。
4回に渡って記事を書き、擦りに擦り続けた電子水の話も今回で一区切りです。
「またかよ」と思った方、これが最後だから許してください<(_ _)>
いるかわかりませんが「電子水の話面白かったよ!!」という方、ありがとうございます。
おにぎりパン先生の次回作にご期待ください。
さて、今回は、過去の自分が書いた電子水についての3記事を含めた総括として、調べたけど記事に書いてなかったことや「結局電子水ってどうなのよ?」って話を書いていこうと思います。
~目次~
電子水というものが生まれた背景
電子水について調べていくうちに、その背景にあるものが見えてきました。
こういう胡散臭い製品の背景にどのような話があるのか気になった方は読んでみてください。
「そんなもんどうでもええわ」って人は読み飛ばしても大丈夫です。
楢崎皐月の「静電三法」
電子水の大本をたどると大体、楢崎皐月(ならさきさつき)が記した「静電三法」という本が出てきます。
読んでみようと思ったのですが、大学図書館や市の図書館で扱いがなかったので読めていません。
静電三法について調べてみると、楢崎氏はこの静電三法の中で「植物波農法」「物質変性法」「人体波健康法」という「3つの法」を紹介しているそうです。
これらの「3つの法」は「楢崎研究所」というサイトで読むことができます。
ようは電気技術者であり物理学者でもあった楢崎氏の電気を活用したライフハックという名のオカルトを紹介していると考えてください。
そこに書いてあったことを簡単にまとめますと以下のようになります。
植物波農法
「大地電位」や「種子の電気的特性」など、電気技術者としての視点から農業や作物の改善策として植物波農法が紹介されています。
農学や生物学に疎い私としてはあまりピンとくる内容ではないですが、どうも大地や種子の持つ電子を始めとする電気的性質や土地の磁場なんかを改善すると、作物本来の力を呼び起こして従来よりも作物の成長を促したり、不作に強くなったりするらしいです。
電子農法と呼ばれることもあるみたいです。
「楢崎研究所」では実績なんかもアピールしていましたが、Wikipediaのページや研究論文などが存在しないことから一般的に普及しているものとは到底思えませんし、本当に効果があるのかも疑問視せざるを得ないですね。
ようは科学的根拠のない民間療法ならぬ民間農法と言ったところでしょうか。
そしてなにより売り文句が電子水のそれとそっくりですね。
さすがは電子水の基礎理論に使われているだけはあります。
物質変性法
モノの性質を静電気や静磁場により変化させることができるといった内容が記されています。
化学出身の私としてはこの辺の話はまだ理解できました。
「モノ」の性質は、その「モノ」を構成している原子や分子の性質で決まらず、その並び方、結晶構造で決まる。
そして、その結晶構造は静電気や静磁場が支配しているために、静電気や静磁場が「モノ」の性質を変えることができる。
というようなことが書いてあります。
この記述は学術的にも完全な間違いではない辺りが、面白くもあり厄介でもある部分ですね。
モノの性質が結晶構造に依存するというのは事実です。
炭素という同じ元素でできているにも関わらず、全く違った性質を示す「ダイヤモンド」や「黒鉛」「カーボンナノチューブ」「グラファイト」「フラーレン」なんかを見ればそれは一目瞭然です。
しかし、その結晶構造を決定しているのは「エネルギーの安定性」です。
ややこしいことに、その「エネルギーの安定性」の中に楢崎が指摘している静電気や静磁場なんかも入っているんです。
だから完全な間違いとは言い切れないという表現を使いました。
しかし、「エネルギーの安定性」は楢崎が指摘するように静電気や静磁場のみではありません。
温度や圧力、周囲の水分量(湿度)といった外部のあらゆる要因が関係してくるのです。
なんで、科学的には正解ではないけどハズレでもないといったところです。
そして、問題なのはこういった特性を持っているのは、一般的に結晶構造を作る固体状態に限られるにも関わらず、こういった効果を拡大解釈して「水」などの液体に当てはめている輩がいることです。
人体波健康法
この項目に関してはもはや何を言っているのか理解できませんでした。
なんか、「電気」というものを絶対視した宗教勧誘にあっている気分です。
皆さんも自身の目で確かめてみてください。
みんな私と同じ気分を味わえばいいんだ!!
マイナスイオン商売
2000年前後に日本で大いに流行した商売です。
空気清浄機やドライヤーにマイナスイオンって文言をつけとけば高く売れたんでしょう。
これも電子水の謳い文句の背後に隠れています。
「マイナスイオンが体にいい」と叫ばれるようになった科学的根拠というのは「季節性気分障害患者の抑鬱効果が確認された」という超限定的なものしかありません。
つまり、健康な人への効果は科学的には実証されていないんです。
それを超絶拡大解釈して生まれたのがこの商売なんですね。
この「マイナスイオンが正義」という風潮の裏で、逆に「プラスイオンは悪(体に悪い)」という風潮も生まれました。
この「プラスイオンは体に悪い」をしっかりと受け継いでいるのが電子水なのです。
電子がマイナス電荷を持っているのは一般的な認識ですからね。
プラスイオンも消せそうでしょ?
詰まる所、電子水は過去の似非科学商売の魂を受け継ぎし者。
似非科学会のサラブレッドと呼んで差し支えないでしょう。
宇野克明のミトコンドリア革命
宇野克明というお医者様が彼の著書「ミトコンドリア革命」の中で、細胞のミトコンドリアの活性を上げたり、数を増やすにはミトコンドリアの活動のために必要な電子を供給すればよいと記しています。
ミトコンドリア革命―私たちの健康・未来はミトコンドリアが握っている (一歩先の医学シリーズ)
これも電子水の効果の裏付けとして紹介されています。
確かに、ミトコンドリアの活動には電子伝達系をはじめとした電子やラジカル種の受け渡しが多数見られます。
しかし、それらの機構はどのような化学反応が関与しているのか明らかになっている以上、電子なんてふわっとした言い方をせずに、ずばり供給すべき化合物やその化合物を摂取できる食べ物を言ってしまえばいいのでは?と思ってしまうのです。(化学出身者の意見です)
この宇野氏の主張が間違っているとか似非科学だということは、私には判断がつきませんが(知識不足のためです、面目ねぇ)、電子を供給するという表現が電子水業界に目を付けられ、いたるところで電子水の効果の根拠として祭り上げられているように感じます。
ちなみに、宇野氏は電子水で電子を補給できるというような、電子水を肯定する発言はしていません。(私の調べた限り)
宇野氏が主張する電子の供給方法は「ES-27」という謎のセラミックス粉末です。
ES-27
宇野氏の著書や主張の中で出てくる電子供給を担う物質として「ES-27」というものが紹介されています。
調べた感じ、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムといったものを混ぜて加工して作っているようです。
水が電子を運ぶと言われるよりも、よっぽどまともに感じてしまいますね。
でも、調べてみると結構怪しかったりします。
ES-27は「ネガトロン効果(Negatron Effect)」なる謎の効果で電子を生み出すと紹介されています。
しかし、ネガトロン効果を調べても学術的な記述は皆無ですし、英語のNegatron Effectを調べても電子を生み出すよな研究内容は見つけられませんでした。
そもそも電子を生み出すって化学の基本である「保存則」に反してるし。
途端に胡散臭くなってきました。
これはあれか?それっぽい言葉を並べて騙そうとするやつか?
また、ネガトロン効果と同様に、ES-27というものについて研究した論文やデータを探しましたが、見つけることができませんでした。
ですから、現状では「ES-27」を含めた宇野氏の主張も科学的根拠があるのか疑問視せざるを得ないですね。
いずれにしても客観的なデータ(論文)がない
前項では電子水誕生の背景に潜むもろもろについて紹介しましたが、共通点としてはいずれも論文や客観的なデータがなく、科学的な根拠が見当たらないという点です。
自称科学者に片足を突っ込んでいる身としては、ある主張をしたい場合は、それを裏付けるデータが必須だと思っています。(そこに理屈付けは必ずしも必要ではない。つまり現象論だけでもいい)
ですから、最低限の科学的根拠(データ)すら示されていないものを、いくら声高に主張したところで似非科学やオカルトの域を出ることはないと考えています。
じゃあ電子水は効果がないのか?
わかりません!
こればっかりは私自身が使っていないので何とも言えないところです。
これまで散々、「科学に基づいてない!」とか「似非科学だ!」とか「説明できない!」とか言っといてそれはないだろう。と感じる方も多いのではないかと思います。
でも、しょうがないんですね。
「論文や科学的根拠がない=効果がない」
ではありませんから。
効果がないことを証明するためには、やってみたが効果が見られなかったという論文なり報告が必要なんです。
現状、電子水というものについての研究報告は効果があるない問わず、全くと言っていいくらいに存在しないので、効果がないとも言い切れないわけです。
ただし、科学者は目ざといです。
金になる分野には当然人が集まります。(科学者も人間ですからね)
山中伸弥教授がiPS細胞の特許を京都大学主導で取ったことにより、世界中のあらゆる生命科学研究機関がiPS細胞の研究に励み、2012年のノーベル賞受賞から10年足らずで実用化目前というところまで来ています。(公的機関が特許を取ることで、公的機関の研究者たちは特許料を払うことなく無償でiPS細胞の研究をできたのです。)
また、小保方晴子氏がSTAP細胞を報告してから、やはり世界中の生命科学者たちはこぞってSTAP細胞の研究をすすめました。
その結果、注目度の高さも相まってあっという間に論文不正が明らかになりました。
いずれの研究も実用化されれば現代医学に革命が起こるといわれた研究です。
これらの例からもわかるように、科学者にとっての金になる = 多くの人の役に立つ なんです。
特に水なんていう我々の周りに当たり前にあるものに関する研究は良くも悪くも長い歴史があり研究者の母数もそれだけ多い分野なんです。
そのような分野で効果が叫ばれているにもかかわらず、電子水に関する研究論文が一切ないということは、今も昔も科学者からは相手にもされていないという状態がうかがえます。
これが意味するところは、効果がない可能性が限りなく高いとということではないでしょうか。
限りなく黒に近いグレーということですね。
まとめ
これまで長々と電子水について書いてきましたがいかがだったでしょうか?
これらの記事を読んでくださった皆様には申し訳ないのですが、これらの記事は若輩者の大学院生、つまり、一般人よりちょっと科学に詳しい程度の人間が書いたものです。
全面的に信じることは非常に危険です!!
結局は自身で考えて判断する必要があるわけです。
考えを助ける参考程度にしてもらえれば幸いです。
そしてもう一点。
私は大学から現在に至るまで、「化学」という分野に身を置いてきた者なので、当然頭の中は化学の分野の常識が中心になっています。
しかし、本日紹介した楢崎氏や宇野氏は私とは違う分野で学問を学んだ人なので、物事の捉え方や考え方が違ったりするわけです。
同じ科学であっても「化学」「物理学」「医学」、全て考え方や常識が違うのです。
ですから、私としては中立の立場で科学的根拠に重点を置いて電子水を評価してきたつもりですが、別分野の方が同じことをすると全く違った結論に至ったりするわけです。
その辺を理解していただけると幸いです。
いずれにせよ間違った科学の知識で人を騙すような商売は滅びればいいと思う。
ではでは~ノシ
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた①
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた②
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた③