こんにちは、おにぎりパンです。
昨日Twitterでも呟いたんですけど、「電子水」というものがテレビで取り上げられて、販売価格が上昇し、入手も難しくなっているらしいです。
電子水ってなんぞや??
水素水の次はこういう戦術なんか?
こんなんで釣られる人おるんかな?
» 水素水の次は「電子水」がマスコミで取り上げられる アマゾンで早速値段が高騰し到着が3月に https://t.co/nlNTcw5uin
— おにぎりパン/日本一周画策中 (@doctorours) 2019年1月30日
水素水に続いて今度は電子水ですよ。
学問に、その中でも科学の分野に携わる身としてはやはり気になるわけですよ。
・どれくらい科学的根拠に基づいて売り出されているのか?
・本当に効果があるのか?
・効果を示すデータはあるのか?
ってな感じにね。
そこで、自分の研究もほっぽり出して電子水について調べてみたら、思いの外ツッコミどころだらけで面白かったので記事にしようと考えたわけです。(こんなことばかりしてるから指導教官から叱られるんですね)
~目次~
ことの発端
ことの発端は、2019年1月29日に放送された「ヒルナンデス!」にて、某モデルさんのカバンの中から「エレクトロンスキンローション」という「電子水(e-water)」なる水を使った化粧水が出てきたそうです。
このことを取り上げたニュース記事曰く「水に電子を含ませることにより、驚きの浸透力を持ち、肌に潤いとツヤを与えてくれる」そうです。
この化粧水は 100 mL で7,020円もするらしく、もともと非常に高価なのですが、番組放送後に購入者が殺到したそうです。
その結果、Amazonでは「ヒルナンデス」と商品名につけられたものが、12,800円で販売されており、入手も2月下旬から3月頭になるそうです。
少し調べてみた
まず手始めに、ヒルナンデス!で紹介された化粧水について調べてみました。
どうやらELECTRONという会社が作っている製品だそうです。
サイトを見てみると中々スタイリッシュなデザインでカッコいい!!(そこは重要じゃない)
その中のFAQに気になる記述が・・・!!
-
Q. インターネットでの販売はしていますか?
・ELECTRON for professional サロン専売ラインは、インターネットでの販売は一切致しておりません。 弊社指定の講習を受講されたサロン様、または弊社公認販売代理店から弊社指定講習を受講された サロン(美容施設)様での直接販売のみとなっております。 正規取扱店はこちら
・ELECTRON EVERYONE (一般販売ライン)は、GMコーポレーションが運営する 公式オンラインショップ、または店舗検索に記載された正規取扱店舗様にて販売しております。
*ご希望の商品のお取扱い有無、及び店舗在庫については、事前にお取扱店様に直接ご確認ください。Q. ELECTRON for professional (サロン専売ライン) をインターネットで販売しているのを見かけたのですが、正規品ですか?
・ELECTRON for professional (サロン専売ライン) は、サロン専売品となっており、インターネット での販売は一切いたしておりませんので、現時点でインターネットで販売されている商品は、 すべてメーカー保証対象外となります。 正規販売店以外ならびに、不正なネット販売サイト等から ご購入された商品につきまして、使用上にて生じました問題や、効果、消費期限等の問題につきましては 責任を負いかねる場合がございますのでご了承下さい。正規取扱店はこちら
・ELECTRON EVERYONE (一般販売ライン)は、GMコーポレーションが運営する 公式オンラインショップ、または正規取扱店にて販売しております。ELECTRON FAQ より
なるほど、インターネットでの販売はしていないと。
狭く深くやっていこうというスタイルなのかな?
ってか、Amazonの商品横流しか偽物じゃねーか!!
続けて技術に関して見ていく私。
やはり理系の人間としては「どうしてそうなるのか」という点が気になるわけでね。
TECHNOLOGYのページにたどり着いたわけです。
ここもやはりスタイリッシュ!!(あまり重要ではない)
以下TECHNOLOGYページの文である。(つまり本記事の題材である)
ELECTRONは、電子水* から生まれた
全く新しいスキンケアプロダクトかつてない浸透力で、物質の最小単位である
素粒子に働きかけ、細胞にコンタクトします。電子水 = 電子を過剰に含ませた還元水
電子を過剰に含ませた還元水
ベ-スの電子水は水でありながら、PH値の高いアルカリ性。
その特性から、薬理実験や代替保存料、洗浄消毒等の目的でも使用されています。
表面張力が低いため浸透力が高く、精製水の約100倍の速度でお肌に浸透。
高いアルカリ性なので殺菌力にすぐれ、アクネ菌などの実験でも結果が出ています。
また、皮膚に触れると弱酸性に中和する特徴があります。独自のFRF Technology®加工で、
使ってすぐにわかる、驚きの効果を当社独自のFRF Technology®加工を施すことにより、
すべてのELECTRON製品が一定の周波数を持つため、
スキンケアの枠を超えてすこやかな美肌をめざす周波数に共振します。
使うたびに、癒しや、スキンケアの喜びと満足感を感じていただけることでしょう。FRF Technology加工
FRF Technology® = “Field Resonance Fine Technology”
素粒子レベルで場を整え、物質に情報を転写させるテクノロジースキンケアの未来へ、ようこそ
ELECTRONは、
年齢・性別を問わず、お肌を健やかにしたい
全ての方にご使用いただけるスキンケア製品です。
あなたとあなたの大切な方へ、スキンケアを通じて
ハッピーをお届けします。美容エステのイノベーション
素肌は紫外線などで発生する活性酸素から常に攻撃を受けています。
今日、美容分野ではエイジングケアが一つの重要なテーマとなっていますが、その対策でとくに大切なのはからだの70%を占める水の還元力です。
私は長年のイオン応用研究から、若々しい美肌をサポートする要因は、細胞膜の復元力と内部を占める結晶水の電子力(e-)に注目しています。
いつまでも健康で若々しく美しくあるために、からだは抗酸化力としての水の電子力(エレクトロン)を必要としています。
人生をイキイキと輝かせるキーワード。
これこそ未来美容エステのイノベーションなのです。
(参考著書:水素と電子の生命)ELECTRON アドバイザー
- 山野井 昇
- Noboru Yamanoi
生体物理医学者。
日本マイナスイオン応用学会会長
一般財団法人未来医学財団理事長,
東京大学大学院医学部研究室にて40数年にわたり
医療、健康、福祉、美容などの最先端分野に従事ELECTRON TECHNOLOGY より
見にくいと感じた方は公式HPでご覧ください。
中々イカした作りのHPですよb(さほど重要ではない)
以下、この内容にツッコミをいれていきます。
ツッコミ1:素粒子に働きかける水
「かつてない浸透力で、物質の最小単位である素粒子に働きかけ、細胞にコンタクトします。」
(;´゚д゚`)エエー
素粒子って何かわかったうえでこの文章を書いているんですかね?
ぶっちゃけ、私は物理学専攻じゃないから、あまり詳しくないけど素粒子への働きかけを観測しているってのは、その筋の研究の最先端か、さらに先を行っているんじゃないですか?
その自慢の「浸透力で素粒子に働きかける」ことを示すデータを今すぐに学会に持っていくことを推奨したいですね。
もしくは世の物理学者たちに謝ってほしいです。
素粒子に関する研究は現在、日本をはじめ多くの国で研究されていますが、世の核物理学者や素粒子論学者は素粒子について調べるために超巨大な加速器や観測機を使い研究しています。
日本では「SPring-8」や「スーパーカミオカンデ」が有名ですね。
世界的にはシュタインズ・ゲートで一躍有名になった「CERN」が有名です。
CERNの建設した加速器はフランスとスイスの国境にあり、比喩でもなんでもなく、本当に町一つを囲むほどの大きさの施設です。
私もジュネーヴに行った際にCERNに行ったのですが、見学は事前申し込みが必要だったようで、自由見学区間とお土産を買って帰りました。
ツッコミ2:電子水の説明
「電子を過剰に含ませた還元水」
電子水とは「電子を過剰に含ませた還元水」だそうです。
(;´゚д゚`)エエー
この文章を書いた人は世の中に電子がのどような状態で存在しているか知らないのでしょうか?
中学化学からやり直してほしいですね。
「電子」というのは原子を構成する成分の一つであり、空気中や液中で「電子」が単体で存在することはほぼありません。
つまり、電子のみを水に入れるということは不可能もしくは可能でも莫大な費用がかかるのです。
ですから「電子を過剰に含ませた」という表現は正確ではないでしょう。
電子水の作り方がわからないとこの辺は何とも言えないですね。。。
「水でありながら、PH値の高いアルカリ性」
まず酸性・塩基(アルカリ)性を示す「水素イオン指数(pH)」の「p」は小文字です。
やはり中学化学k(略
あと、「水でありながら、pHの高いアルカリ性」ということは明らかにアルカリ性になる何かが混ざってますよね?
もしくはアルカリイオン水のように電気分解などを利用して意図的に「OH–」の濃度をあげてますよね?
あれ?それってアルカリイオン水と同じなんじゃ・・・?
pHの正確な説明はとても難しいです。
簡単に説明しますと、pHとは水の中の「H+」の濃度を示したものです。
ややこしいことにpHの計算式の中に「-log10」という逆数の常用対数が出てくるので、「H+」の濃度が濃くなるとpHの値は下がり、「H+」の濃度が薄くなるとpHの値は上がります。
水は化学式で「H2O」と表記されます。
そして、水の分子の極一部は
H2O → H+ + OH–
とイオン化しています。
この場合は水自身が中性なのでpHは7付近の数値を示します。
上でも述べたように、水がアルカリ性になるということは、水の中の「H+」濃度が低くなることを意味します。
水をアルカリ性にするには、
・水に溶けた際に「OH–」を出すもの(水酸化ナトリウムなど)
・水に溶けた際に「H+」を捕まえてしまうもの(アンモニア)
などを水に溶かすことにより達成できます。
もしくは、水の電気分解を利用する方法も知られています。
水は電気を流すことにより電気分解して陽極で酸素、陰極で水素が発生します。
2H2O → 2H2 + O2
陽極:4OH– → O2 + 2H2O + 4e–
陰極:2H+ + 2e– → H2
この時の陰極の反応を見てわかる通り、「H+」を消費して水素を生成しています。
つまり、陰極側の水では「H+」濃度が減少するのです。
この電気分解装置の陰極側の水を汲み取ったのがアルカリイオン水です。
ちなみに、陽極側の水は酸性になります。
2019/2/3 追記
JCastニュースがこの化粧品のメーカーに取材した記事を公開していました。
この記事によりますと、メーカー側は電子水の作り方について以下のように回答しています。
「電子水は、委託先から供給を受けており、水を電気分解して作ったものだと聞いています。有効的に働く成分として研究機関で独自に検証してもらいました。しかし、薬事法に触れるような効果をうたっているわけではありません」
水を電気分解して作ったアルカリ性の水って・・・
それアルカリイオン水じゃねーか!!!
「薬理実験や代替保存料、洗浄消毒等でも使用される」
実際に使用されていると主張していますね。
(;¬д¬) アヤシイ
正直、ここまで化学を知っている人が書いたとは思えない文章なのでどうしても疑いの目で見てしまいますね。
代替保存料や洗浄消毒として使えることを示すデータが欲しいところですね。
「表面張力が低いため浸透力が高く、精製水の約100倍の速度でお肌に浸透」
確かに、表面張力が弱い≒接触角が小さい(濡れやすい)=浸透力 となるかもしれませんね。
しかし、なぜ表面張力が低下しているんですかね?
この辺についてもっと説明が欲しいところですね
また、その浸透力は「精製水の約100倍の速度」だそうです。
これが本当なら凄まじい事実です。
まあ、調べても論文とかヒットしないんでたぶん嘘ですけどね。
いや、技術を社内で独占している可能性が微レ存・・・ないな(笑)
もし本当なら、ぜひとも実験データを見てみたいですね。
「殺菌作用を持つほどのアルカリ性」
殺菌作用を持つほどのアルカリ性は量にもよりますが、おそらく菌だけでなく人体にも有害なので危険だと思いますよ。
強アルカリ性は人体を構成するタンパク質を溶かしてしまいます。
アルカリ性の温泉で肌がツルツル(ヌルヌル?)になるのは皮膚のタンパク質が溶けているからです。
しかしながら、皮膚に触れると中和されて弱酸性になるそうです。
この辺は具体的なpHや、なぜアルカリ性なのかが分からないのでコメントしづらいですね。
ただ殺菌作用を持つほどのアルカリ溶液を肌が中和できるかは甚だ疑問ではありますね。
とりあえず、中学化学で中和について勉強してきてほしいですね。
ツッコミ3:FRF Technology®
FRF Technology® = “Field Resonance Fine Technology” だそうです。
(*「´・ェ・`)?
素粒子レベルで場を整え、物質に情報を転写させる技術らしいですが、もはやなにを言っているのかわかりません。
そして素粒子についてはもう突っ込みません。
とりあえず世の物理学者に謝罪してほしいです。
FRF Technology という技術は®マークがついているので商標登録をしているのですかね?
私はその辺あまり詳しくないのでわからないですけど、少なくとも特許情報プラットフォームを簡単に調べた感じ出てきませんでしたね。
調べ方が甘いのかな?
そして、製品はすべて一定の周波数を持っているそうです。
さらに、その周波数が美肌を目指す周波数と共鳴するみたいです。
(´L_`a)゙ ヴーン…
もう何を言っているのかわからないですね。。。
一定の周波数ってなんだよ。
何の波を出してるの?
音?光?振動?存在確立の波?量子力学なの?シュレディンガー方程式なの?猫なの?
そんで共鳴によって美肌が実現するなら、化粧水なんか通さなくてもその周波数浴びてればいいんじゃないの?
ちょっと理解に苦しみますね。
まとめ
水素水の座を継ぐ水「電子水」について調べてみました。
想像通りの胡散臭さで、読んでいてツッコみが追いつきませんでした。
でも個人的には水素水の滅茶苦茶さには、まだまだ及ばないですね。
私が忠告するまでもなく手を出す人はいないと思いますが、怪しいので注意したほうがいいですよ。
ちなみに私は買って物性測定をしたいと感じています(笑)
本当はまだまだ調べたんですけど、記事書くのに思ったよりも時間と体力とメンタルを削られたので、続きを書くかは未定です(笑)
ではでは~ノシ
追記:電子水の作り方について調べて記事書きました。よかったらどうぞ
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた②
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた③
理系大学院生が「電子水」について調べたら、ツッコミどころが多すぎた【総括】